スポーツ整形外科

長い選手生活を維持するために

スポーツの練習は同じ動作の繰り返し

スポーツの練習は同じ動作の繰り返し野球やサッカー・陸上・ジャンプ選手など、スポーツの練習は同じ動作の繰り返しを要求されます。野球の投球動作であれば野球肩や野球肘、ランナーなどに多い疲労骨折やシンスプリントなどは、すべてスポーツ障害の1つです。捻挫も、湿布を貼れば回復するとされていますが、捻挫も靭帯損傷です。膝関節に靭帯損傷があると、半月板損傷など合併症を引き起こしやすいので注意が必要です。選手生命を長く維持するためにも、スポーツの練習によって起こる症状は、軽い症状でも自己判断せずに適切な診断と治療を受けることが大切です。

選手をサポートする保護者の方へ

お子さんの長い選手生活を維持させるためにも、捻挫や身体の痛みを訴えている場合は、早めにご相談ください。お子さんの身体の機能を長く維持し、スポーツを少しでも長く続けるためにも適切なケアが必要です。練習によるスポーツ障害が起こる動作や連鎖運動を考慮しながら、早期の復帰を目指すためには早めの受診が不可欠です。お子さんの身体の異変に細かく気を配ることで、スポーツ生命を見守ることが大切です。練習後の心身のケアにも注意を払いながらサポートしてあげてください。

肩の疾患

野球肩(投球障害肩)

投球動作は、肩や肘には力学的ストレスがかかる、非常に負荷がかかる動作です。わずか0.139秒間で、静止しているボールに150km/secほどのスピードの力を伝えるため、投球する度におよそ100kgの負荷が肩関節にかかることになります。野球肩は、ほとんどが運動連鎖の乱れによって肩関節に負荷がかかり、関節内の組織やその周囲に炎症が起こります。靭帯や腱・軟骨などの損傷は稀ですが、病状が進行すると組織損傷と複雑化してしまいます。

亜脱臼障害

肩は脱臼が起こりやすい関節です。亜脱臼とは、野球肩などで生じる肩関節前方不安定症という、繰り返す投球動作によって肩関節が緩んで不安定になる状態です。痛みや違和感、肩が抜けそうな感覚が起こります。投球動作によって繰り返し肩の前方に大きな負荷がかかり、肩の前関節包が緩み、前後方向に肩がぶれてきます。このぶれを抑えるために肩関節周辺の腱板が補佐する働きをしますが、症状が深刻な場合は腱板不全断裂といって、腱板自体が傷んでしまいます。

肘の疾患

野球肘

成長期のお子さんがボールの投げ過ぎによって肘が痛み、伸びにくくなったり曲がりにくくなったりする症状を野球肘と言います。悪化すると急に動かせなくなるなどの症状が見られます。投球動作によって、繰り返し肘に強い負荷がかかることが原因です。骨同士が肘外側でぶつかり、骨や軟骨が傷んだり剥がれたりします。また、肘内側では靭帯や腱・軟骨に痛みが生じます。この痛みを我慢し、放置して投球を続けてしまうと手術が必要なほど病状が悪化してしまいます。野球肘の治療は、まず投球を中止します。肘を安静に保つこと、またノースロ-中に肘関節に負荷がかからない状態で投球フォームを修正することが大切です。さらに下肢の体幹・上肢の柔軟性を高めることも必要となります。

離断性骨軟骨炎(肘)

肘外側の軟骨とその深部にある骨に障害が起きます。小学生から中学生ぐらいのお子さんによく見られ、肘を動かした時の痛みや可動域が制限されるなどの症状があります。場合によっては痛みが全くないケースも見られます。離断性骨軟骨炎の治療は、ノースロー・運動禁止・局所安静・低出力超音波療法などを行い、軟骨・骨の癒合促進を図ります。重度の場合は、手術治療が必要になることがあります。

関節内遊離体

関節内に、軟骨や小骨片(骨のかけら)が見られる疾患です。骨のかけらが遊離して、関節内を自由に動き回るので関節ネズミと呼ばれています。遊離した骨のかけらが広い空間にあるときは無症状ですが、関節の狭い空間や挟まると強い痛みや可動域制限が起こります。この場合、投球動作が出来なくなり、日常生活の動作でも痛みが生じ、支障を来たします。

手関節の疾患

TFCC損傷

手関節の疾患三角線維軟骨複合体をTFCCと言い、手関節尺側(小指側)を安定させて、衝撃を和らげるクッションの役割を担っています。手関節をひねったり、加齢によってこのTFCCを損傷する状態をTFCC損傷と言います。手関節尺側に痛みが起こります。特に手関節をひねると痛みを感じます。手のひらを上に向けて手関節をひねる、下に向けてひねるなどの動作は、日常生活で例えるとドアノブやドライバーを回す動作のときに感じることが多いようです。診察では、手関節部の腱鞘炎や手関節の靭帯損傷による不安定症と識別します。

膝関節の疾患

半月板損傷

膝に体重がかかる瞬間や、膝の曲げ伸ばしの際に痛みが生じます。そのほか、膝関節が上手く動かない、膝関節に違和感がある、関節の可動域が制限されるなどの症状が大きな特徴です。また、傷がついて避けた半月板がなにかのきっかけで関節に挟まると、膝の曲げ伸ばしが難しいロッキング現象が起こり、場合によっては激痛で歩行困難に至ることがあります。

靭帯損傷

骨と骨を結合している強靭な線維組織が靭帯です。バスケットボールやバレーボール、スキーなど強い力が加わるスポーツなどに見られる損傷で、場合によっては断裂する靭帯断裂を引き起こします。主に膝関節の前十字靭帯・後十字靭帯の断裂・足関節の靭帯断裂などがあります。主な症状は、強い痛みと腫れが現れ、患部周辺が動かないこともあります。膝関節の十字靭帯を損傷した場合は、不安定感が強くなり、放置してしまうと膝関節の組織を傷つけて、骨が変形してしまいます。

離断性骨軟骨炎(膝)

10代の成長期の男子によく見られるスポーツ障害の1つで、骨の先端にある軟骨部分が壊死し、骨の一部が剥がれることで引き起こるのが離断性骨軟骨炎です。10~20代に多いのが特徴ですが、稀に幼児や高齢の方にも見られます。急に膝に激しい痛みが生じたり、動かなくなったりします。一定の角度以上に伸ばしたり、曲げたりできず動作に制限が生じます。そのほか、膝になにかが挟まっているような感じがして動かせない、膝を動かすと痛く、安静時は痛くないなどの特徴があります。

足関節の疾患

捻挫(靭帯損傷)

不意に大きな力が加わって、関節周辺を損傷したり、関節の可動域を超えたときに起こる損傷を指します。関節であれば大小関わらずどの関節でも捻挫が起きる可能性があります。足首をひねった時の軽い捻挫であれば外側の靭帯が伸びた状態で、重度になると線維がいくつか断裂して、痛みと腫れが見られます。さらに酷い場合は、靭帯が完全に切れてしまい、体重をかけられず、内出血を起こして激しい痛みが生じます。

足底筋膜炎

足裏の痛みを代表する疾患が足底筋膜炎です。慢性的な痛みが現れるほか、なかには一度の外傷で足底腱膜が断裂してしまう場合があります。ランニングや歩行動作によって、足底腱膜に強いストレスが加わり発症します。特に、ふくらはぎの筋肉や足底腱膜が固い場合や、扁平足や土踏まずが高い足の場合によく見られます。この強いストレスの繰り返しによって、足底腱膜に炎症が起こって、強い痛みとなります。

シンスプリント

脛骨疲労性骨膜炎(けいこつひろうせいこつまくえん)と言い、骨膜に炎症が起こることで痛みが現れる障害をシンスプリントと言います。バスケットボールやバレーボールなどのジャンプ動作や、マラソンなど長距離ランニングなどの繰り返し動作によって、ふくらはぎの内側・脛骨下部分に炎症が起こり、痛みが生じます。慢性的な疲労の蓄積が原因にもなりますが、発症してしまってもある程度運動できてしまうので注意が必要です。症状が進行すると疲労骨折につながる恐れがあります。下肢の柔軟性の低下を改善させることで、シンスプリントの症状を軽減させることができます。

腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)

ランニングをする方によく見られるスポーツ障害で、膝の外側に疼痛が現れます。痛みは、足が地面について体重がかかった時に生じます。スピードや走行量に応じて痛みが強まります。足首の柔軟性が低く、つま先が外に向いた走行フォームの方や、体幹や股関節機能が低下していて、足の接地時に身体が横方向に傾くフォームの方は、腸脛靭帯に大きな負荷がかかるため腸脛靭帯炎を起こしやすいとされています。

疲労骨折

一度の大きな衝撃による通常の骨折とは違って、同じ部位に繰り返し小さな力が加わり、骨にひびが入り、そのひびが酷く進み完全な骨折になる状態を疲労骨折と言います。スポーツ選手に多く見られ、短期集中トレーニングなどを行った際に多く見られます。選手側の要因として挙げられるのは、筋力不足・柔軟性不足・アンバランスな筋力・未熟な技術とし、環境的要因では、過度なトレーニング・不適切なシューズ・技術に合わない練習・地面が硬すぎる、或いは柔らかすぎるなどが挙げられます。特に多いのが足趾の疲労骨折です。

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